【呪術廻戦】五条悟の最期① 空港に来た夏油がアンドレだった・・・

 マンガを読んでこんなに頭が混乱するのは2年ぶりです。9月末にジャンプを読んで以来、ほかのことが手につかないほど心が乱れていろいろ差し支えているので、頭を整理するために、久しぶりにこのブログに向かうことにしました。

 

■五条悟が死んだ月曜日

 すでにあらゆるところで話題になっているのでご存知の方が多いと思いますが、ジャンプに連載中の「呪術廻戦」236話(2023年9月25日発売)で、作中「最強」の五条悟が、呪いの王「宿儺」に負けて死にました。私はコミックス派なので、ジャンプはリアタイしてないのですが、その週はたまたま家族が買ってきて横で読んでいました。私自身は読むつもりはなかったのですが、「ヒッ」と悲鳴をあげて家族がジャンプに突っ伏したので、イヤ~な予感がして、つい火曜の朝に一人で開いてしまいました…それが混乱の始まりです。

 まず思ったのは、これは現実だろうか、ということです。最強、最強と言われたごじょセンの惨敗と無残な死に様に多くの人が衝撃を受けたようですが、私が衝撃を受けたのは、それだけではありません。冒頭から描かれていた五条悟の死に際の「妄想」に、ものすごいショックを受けたのです。

 

■これ、ジャンプだよね?


冒頭から、「や」と言って現れたのは、私の最推しの高専時代の夏油傑。めっちゃ笑顔です。まずこれだけで、公式による何のごほうび回が始まったのかと身構えました。そして会話から、どうやら死後の世界が舞台のよう。この時点で、???ごじょセン負けて死んだ???ですが夏油の笑顔に引き込まれます。「俺の妄想であってくれよ」と、五条が「俺」という高専時代の言葉をつかって、リラックスしてるのがいい。「君(きみ)」とよびかける夏油の声が優しげ(想像)。夏油は死んだ後も、五条をずっと見守ってくれていたようです。学生服姿の二人だけの会話が5ページ続きます。その会話が…なんというか、私の白昼夢か妄想かと思いました。

 五条が語るのは強者ゆえの孤独と最強同士の戦い。そして今は宿儺に申し訳なさすら感じているというのです。「孤高の侘しさは誰よりも共感できるつもりだ。みんな大好きさ。寂しくはなかった。でもどこかで人としてというより生き物としての線引きがあったのかな」。これは「五条先生」としては言ってはいけないことで、誰にも明かしてこなかった五条悟の本音なのでしょう。ここのコマで夏油が目をそらすところ、曇った顔、「……」という吹き出し。「ああ、やっぱりそんなことを考えていたのか」「やはり自分では五条悟に釣り合わないんだな」と悟った表情に見えます(私には!)。

 夏油の気持ちなどお構いなしに、五条の残酷な語りが続きます。五条にとって周囲の人は生き物としてカテゴリーの異なる「花」に見えていたというのです。「花に自分を分かってほしいなんて思わないだろ」「宿儺にはすべてをぶつけた」「全部伝えたかった。伝わって欲しかった」。

 真意を理解しようと、夏油が横から青い瞳の奥をじっと見つめているのがわかります。五条はその目線には気づかないで自分の思いに没頭している。「…楽しかったな」。夢見るような瞳、まつげバサバサの美しい横顔の描写は、夏油の目に映った五条の姿なのでしょう。悟よ、キミは残酷なやつだ。こんなにキミを理解しようと努めてる男の隣りで、「あいつにだけはわかってほしかった」なんて他の男の話をするんだからな…って、この時点で、これは明らかに恋愛マンガなんだよ!

 そして極めつけが、夏油のセリフ。「…妬けるねえ。でも君が満足したならそれで良かったよ」!!!!(赤面)おいおいおい!こんなことただの「親友」が言うかあ? これは、少女マンガにたまに登場する「選ばれないと分かってる男」もしくは「自分が本命だと気づいてない男」の吐く理解と苦悩の愛の言葉です。これジャンプだよね?「別マ」じゃないよね? 日本で一番人気の少年マンガ「呪術廻戦」だよね? 堂々とBL展開してる!?コイツは妄想の中で夏油に何を言わせてるんだ。これじゃ夏油がアンドレじゃん。そういえばオスカルが死んだ時にアンドレ迎えに来てたもんなあ。0.2秒の間に大量の情報が脳に流れ込み大混乱。

 「……満足ね。背中を叩いた中にお前がいたら満足だったかもな」。そうなんだ、ごじょセンは死地に向かう時に「夏油がそばにいて応援してくれていたらなあ」って考えてたんだね。しかしよくよく考えると「宿儺への君の思いに嫉妬する」あるいは、「君を満たした宿儺に嫉妬する」と言ってる夏油に対し「お前がいないと自分は満たされない」と答えているようにも読めます。そして、もう「敵わない」とでも言うように、ははっと笑って夏油は下を向いて涙ぐむのです…

 これを「友情」とジャンプが言い張るならそれでもいい。しかし、腐った私には刺激が強すぎて脳が焼き切れました。ヒロインと彼がお互いの気持ちを確認し、「これからはずっと一緒だね」と結ばれるときの少女マンガのヤマ場にしか見えない!あとこの回の夏油が・・・異様にかっこいい。色気がやばい。青春時代にこのお兄さんに甘やかされたら感覚がおかしくなりそう。

 なんの準備もなく、すごいものを見てしまった。これが私の妄想ではなくて、他ならぬ五条自身の「僕の妄想」、つまり心の奥に隠された本当の願いだというのだから、もう逃げ場がないよ…。全体的には絵もセリフも非常に丁寧に描かれていました。思いつきで描かれた場面ではなく前から考え抜かれ、多くの人の手を経て洗練された印象。

  それで、私も夏油好きだけど、悟もやっぱり夏油が好きだったのね、と明らかに場違いな共感で胸がいっぱいに。阿鼻叫喚の嵐の中、この回読んで、こんな気持ちになったのは、世界で私一人だけですね、きっと。