祝小学館漫画賞受賞 「消えた初恋」について心ゆくまで書きたい(2)

■コミックス派のみなさま ネタバレ厳重注意■

 この作品の魅力をさらに語っていきますが、私、本誌(別冊マーガレット)にも手を出しているため、こちらに、2022年3月発売予定の8巻の内容も含んでしまっています。コミックス派の方はネタバレ厳重注意です!

 

◇変わっていく二人の関係を語らせてくれ

 

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すべてのきっかけは消しゴムから=消えた初恋1巻より

 青木が「イダくん♡」と書かれた橋下さん(青木の初恋の相手)の消しゴムを落とし、それを見た井田くんの「青木はどうやら俺のことを好きらしい」という誤解から話が始まります。恋愛対象として真剣に考える井田くんに大混乱する青木。クラスメートとしてしか知らなかった井田くんの誠実さに気づき、惹かれるようになります。

 

◆ラブコメの教科書展開
 無謀に思われた青木の片思いがかなう4巻が一つの区切りでしょうか。旅行に行ったらダブルベッドしかないとか、ラブコメの教科書みたいな王道なのですが、前回さんざん書いたような二人の魅力と、けんかしてもすぐ仲直りする明るさ、イヤな奴が1人も出てこない優しい世界観で、ププっと新鮮に、軽やかに話が進みます。

 6巻までは青木から「行きたいとこあるわ」「(クリスマスケーキ)一緒に食う?」「(頬にキス)してみるか!」などとアプローチしています。井田くんは、恋愛経験のなさからどうしていいのかよくわからない受け身の姿勢。青木に勢いで抱きつかれても(うれしいことがあるとすぐに抱きつく)、動揺したり背中をポンポンたたくだけで、背中に腕を回すことはありません。少女漫画の世界のルールに従って、恋愛のステップを順を追って描いていこうという「消えた初恋」の世界。男の子同士ということもあり、一歩を踏み出す壁はかなり高く、前半は非常にプラトニック。「奇跡の片思い派」としてはそこがいいんだな。「人を好きになるってなんだろう」がテーマになっています。

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この提案はかなり恥ずかしい。がんばれ青木!=消えた初恋6巻より

◆変化は京都旅行から

 そして6巻時点では「フェアじゃねー」という青木の抗議に、「次は俺から(キス)するな」と責任感が前面に出ているような様子の井田くんですが、7巻の京都旅行から潮目が変わります。旅行の後になって、「一緒の大学行こうぜ」と初めて井田くん側からのリクエストがあるのです。

 ここら辺、最初に読んだときは、前夜の出来事(ナゾの妖精出現)の衝撃で読み落としていたけど、よく考えたら「一緒の大学に行こう」ってけっこう重い提案ですよね。大学受験や就職活動を理由に振られた経験のある私としては、こんなこと言われてみたかったな~とか思ったり。

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エロいことしなかったせいで旅館に妖精?が出現。翌日井田くんに変化が・・・
=消えた初恋7巻より



◆最近の井田くんにニヤニヤが止まらない

 その後は、「付き合ってると言いたい」「いまキスしたい」「他の男にちょっかい出されたくない」「自分の部屋でもっと一緒に過ごしたい」「親に恋人として紹介したい」とうぶ(初心LOVE!)な青木も、読んでる私もワタワタの、まさかの井田くん→青木の大展開。プラトニックな世界は溶け始め、この先どういう流れになるのかはほぼ自明で、ヤバいです、もうニヤニヤが止まりませんっ…!

 

続いて恒例の、勝手に名場面集に行きたいと思います。誰にも頼まれてないけど、書かずにいられないんだよな…。