【直虎24話感想】と政次の不憫(=ほぼ半生)まとめ。もしかして今が一番、幸せですか…?

 昨夜は「見つめ合って微笑みあう二人」という、至福の展開で終了し、幸せな気持ちで布団に入ることができました。ありがとうございます。予告編でなっちゃんに抱きつかれている政次を見て、胸がざわざわしましたが…

 2クールが終了し、直虎がすっかり城主らしくなってきました。たけさんとの別れの場面では、「もうおとわはいないんだ」と、見ている私もほろり。信長も登場し、なんだか大河ドラマみたいになってきました。

 先日、1話目からドラマを見返して、政次のこれまでの不憫は、膠着した片思いとともに、身近な人たちに信頼してもらえないこと、尽くしても、無視されたり気づかれなかったり、大切に扱われないことに多くを発していることに気づきました。それでも、献身をつづける姿にけなげさを感じていたんだな、と。そう考えると、23話で直虎が龍雲丸を家来にするかどうか相談し、政次の判断を優先した(つまり、自分の恋愛よりも、政次との関係を大切にした)ときに、彼の不憫の一部は報われて、二人の信頼は完全なものになったのだと思います。

 主従として直虎と強固な信頼関係を築いた今、本当の意味での不憫な場面をもう見ることはないのかもしれません。ここで、一度まとめておきたいと思います。読めばもっと好きになる、小野但馬守政次のこれまでの不憫について。

 

■初恋の女の子に目の前でフラれる(しかも4回も)

 物語は直虎(おとわ)と直親(亀之丞)が9歳、政次(鶴丸)が10歳の時から始まります。親同士が決めて、直虎と直親は夫婦約束をし、直親が井伊家の家督を継ぐことになります。お寺の手習いの場面がフラれポイントその1です。二人の夫婦約束が家中のうわさになった翌日、いつもは男の子のようなおとわが、この日はちゃんと小袖を着ています。「亀はわれの旦那様になるのじゃから」。亀の前でしおらしいおとわの姿を見て、鶴丸は「そうなるよな」とさみしそうにほほえみます(第1話 井伊谷の少女)。
 

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さらに可哀そうなのがフラれポイントその2です。直親の父親に今川から謀反の疑いがかかり、直親は井伊を追われます。今川に告げ口をしたのは、鶴丸父親の小野和泉守政直。政直は鶴丸に井伊家の家督をつがせようと、鶴丸とおとわを結婚させようとします。大人の思惑はともかく、好きな女の子が自分と結婚するのだと思うと、甘ずっぱい気持ちになる鶴丸。ところが、当のおとわは「夫婦約束のことなのじゃが、反故にする手はないか。亀は必ず帰ると約束したのじゃ。待っていなければならぬ」と真顔で相談してきます。ひ、ひどい。優しい鶴丸は「俺がいなくなったところで、弟がいるからなあ」とアドバイス

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そのヒントから、おとわは手に刀を持ち、自分の髪の毛をギザギザに切って血まみれになりながら出家。「出家をすれば、誰の嫁にならずとも済むではないですか!」って満面の笑顔です。えぐい。ここまでやならくても…。自分のアイデアに有頂天で、やられた方の気持ちはまったく考えていません。もちろん縁談は破談になります。政次の悲しい初恋こじらせ人生の始まりです。(第2話 崖っぷちの姫)
 フラれポイントその3は、3人が大人になってからです。直虎と直親が19歳、政次が20歳。10年たって、美しい尼になったおとわを、政次は見守り続けていたようです。そこに逃亡していた直親が井伊に戻ってきます。
 今川からの検地の際に、隠し里を今川にばれないように工作しようとする直親。おとわは、直親と結ばれないものの、「直親のために竜宮小僧になる!」と奔走します。亡き父親のあとをついて、今川の目付けの立場にいる政次の家をたずね、いきなり頭を下げ「鶴、このとおりじゃ。亀は鶴のことを信じておる。どうかその気持ちを裏切らないでほしいのじゃ」と頼みます。言われなくても助けるつもりだった政次はむっとして、「亀に言われて来たのか」「違う!われはその、亀の役にたちたくて、勝手にきたのじゃ」。この期におよんでも、亀のことしか考えないおとわに、「では還俗して俺と一緒になるか?次郎さまは俺の立場ではものを考えぬお人であるらしい」などとたたみかけます。一緒になりたい、というのはけんかの中に交えた本音。でもおとわは困惑しきった表情。「なんの覚悟もないのなら、寺で経でも読んでおれ」。おとわを傷つけ、自分も傷つく政次が切ない。(第7話 検地がやってきた)
 

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フラれポイントその4は、記憶に新しい第22話(虎と龍)。直親が死に、裏切りの誤解がとけてこれまでになく心を通わせる直虎と政次ですが、まさかの第三の男・龍雲丸の登場です。屋敷で開いた鍋パーティの場面。龍雲丸を気に入り、乙女のようにはしゃぐ直虎は、政次の真横で、「これからもよろしく頼む!」とくしゃくしゃの笑顔を見せます。政次は完全に蚊帳の外。ここにきて、この項目の政次の不憫レベルは、最高地点に達していると思われます。

 

 

■でもその子だけが好き

 

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ここまで思いが届かないと、普通は他の女性を好きになりそうですが、政次に他の女性の影はありません。モテないというわけではなく、同居の亡き弟の嫁、なっちゃんは明らかに政次に惚れてる様子。いつも優しくしてくれますが、政次は一定の距離をおいています。完全に膠着した片思いなのに、他の女性を好きになれない。これはこれで、本人もかなり持てあましているのではないでしょうか。

 

 

■有能なのに評価されない(たまに恨まれる)

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 幼い頃から聡明な政次ですが、小野家に生まれたために家中で嫌われて、何を言っても「今川の犬」とさげすまれ、能力が正当に評価されません。しかも弁が立つので、正論で返し、恨みを買うこともしばしば。一番かわいそうだったのは、第10話(走れ竜宮小僧)。桶狭間の戦いで戦死した政次の弟・玄蕃のおよめさんのなっちゃんは、玄蕃が亡くなったあとも、息子の亥之助を連れて小野家にいます。本人の希望ですが、なっちゃん父親脳筋系・奥山朝利は、政次になっちゃん母子を返すように迫ります。「亥之助がこちらに来てしまえば、人質をとられた格好になるからか」とげすの勘ぐり。そこで、政次のザ正論。「かような大事なときに奥山殿は寝床の中で己の家のことばかり考えておられると、お方様もみなさまも、失望されましょうな」。で、頭空っぽの朝利に斬りかかられた政次は、逆に朝利を斬ってしまいます。けがをして、ふるえる政次が向かったのは、おとわのいるお寺。この場面、「ふるえる子犬」とツイッターで話題になりました。

 

 

■帰ってきた幼なじみが脳筋サイコパス

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 逃亡生活から10年ぶりに戻ってきた幼なじみ・直親の人格がゆがんでしまっています。今見返してみると、逃亡生活ゆえに、人を心から信頼するということができなくなっていたのかも、とは思いますが、ともかくひどい。一番ひどかったのは、第7話(検地がやってきた)。検地のさいに、隠し里が今川の役人にばれそうになった時の場面です。「これは井伊の里ではないのか?まさか、われらをたばかろうとしたのではあるまいな?」今川の役人に迫られて、政次は腹をくくり、隠し里の台帳を出そうとした瞬間、直親が政次を問い詰めます。「私は帰ってきたばっかりでわかりません。但馬、ここは井伊の里ではないのであろう。何も言ってなかったではないか」と、部下にいきなり罪を押しつける。オイオイ、クズ上司じゃないか…。政次は、とっさに「ここはかって南朝の皇子が隠れておすまいになられていた里にございます。故に井伊領ではありません」と答えますが、怒りがおさまりません。お寺の井戸端に直親を呼び出し、「それがしを信じておられぬならおられぬでかまいません。されど信じているふりをされるのは気分がよいものではありませぬ」と言って立ち去ろうとします。そこに直親から、自分の行動を正当化するようなひと言。「井伊を守るのは、おとわのためだと思うてはもらえぬか」。政次は、冷たい表情で、「お前のそういうところが好かぬ」と去っていきます。

 

父親に呪いをかけられ、家中で裏切り者扱い

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 政次の父親の政直は、筆頭家老ですが、今川びいきです。直親の父親を今川に売ったり、政次をおとわと結婚させて家督を奪おうとしたりと、野心家で、家中で毛虫のように嫌われています。死ぬ間際、政次に対し、「お前はわしを卑しいと思うておるじゃろ。なりふりかまわぬうそつきの裏切り者。己はこうはならんと、ずっとわしをさげすんでおる。じゃがな、言うておく。お前はわしを必ず同じ道をたどるぞ」と呪いをかけます。その当時の政次はそんなはずはないと一蹴しますが、今川の権力の元、直親を裏切らざるを得ない立場に追い込まれ、思い出すのは父親のひと言。そして、井伊の男たちがみんな死にたえたころに、ダースベーダ―のような黒づくめの姿になって、直虎の前に現れるのです。

 

 

■人の気持ちを思いやる性格が裏目に出て、貧乏くじ

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 政次は物語の最初から、人の気持ちを思いやる優しい少年として描かれています。熱が出て倒れた亀を背負って家に届けますが、政次の父親を嫌う家人には「おい、おまえが亀之丞さまに無理をさせたのか?」と憎々しげに言われます。こんなところがとてもかわいそうなのですが、ずっと性格は優しいままです。つい前回も、直虎の龍雲丸に思いを寄せているのを知りながら、近藤にとらえられそうになった龍雲丸を逃がします。

 

■とにかくツイてない

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 大人編スタートの第5話(亀之丞帰る)の最初の場面は、政次の父・政直が政次に井伊家の家督をつがせようと、奥山朝利の娘との結婚話をすすめ、それを政次がおとわに相談にいくところから始まります。しかし、この話は、亀が10年ぶりに井伊に帰ってくることになり、立ち消えに。本人は別に井伊の家督がほしいとは思っていなさそうですが、こんな感じで、常にツイてない…。

 

 

【結論】
 ・報われない片思いなのに、ストーカーとか逆恨みとか、そっち方向にいかず、相手の心の負担にならないように、陰で守り続けるという姿勢に徹しているところが希有
 ・家のために尽くしても、信頼されないことがほとんどの人生で、今初めて当主の直虎と信頼関係を築いている。サイコパス直親も死に、龍雲丸も家来になることを断り、片思いは相変わらずだけど、もしかして、今が一番、幸せですか…?