NHK大河ドラマ「直虎」にハマってます


高橋一生さんの「政次」がサイコー!

 久しぶりの更新になります。やっとハマれるドラマに巡り会えました。「直虎」です。主人公の幼なじみ役の高橋一生さんが最高。ぐっと心をつかまれています。
 大河ドラマを見る習慣がなかったのですが、連休中にたまたま総集編を見て引かれました。高橋一生さん、低い声(柴田恭平さんにそっくり)と、表情の演技のうまさが際立っています。そのまま、5月7日の第18話「あるいは、裏切りのいう名の鶴」(タイトルはすべて、何かしらのパロディになっています。これはフランス映画)を見て、あまりにハマったので、NHKのサイトに2000円を投入し、過去のものも1から全部見てしまいました。高橋さんの視点で、しかも何回も。あー、なんたること。自分が怖い。それで、誰にも頼まれていませんが、またも勝手に解説したいと思います。

 

三浦春馬さんは「太陽」高橋一生さんは「月」

 前半は柴咲コウさん演じる主人公の「おとわ(のちの井伊直虎)」と、許嫁だった「亀之丞(のちの井伊直親)」(三浦春馬さん)、家老の子どもである「鶴丸(のちの小野政次)」(高橋一生さん)の幼なじみ3人を中心に話が進んでいきます。三浦さん演じる直親は、体も大きく、武芸にも秀いで、さわやかなイケメン。しかも次期当主に決まっている「太陽」のような存在で、三浦さんが生きている間は高橋さんの政次は、昼間の月のように、かすんで見えます。

 

■直親の「好きの搾取」がコワい

 それで、やっぱり直親がいいのかなあとか思いがちなのですが、この人には怖いところがある。第6話「初恋の別れ道」。井伊家を支配している今川家の手前、おとわと結婚できないことがわかると、直親はおとわに対し、「自殺に見せかけて、しばらく姿を隠していてくれ、いつか迎えに行くから」と迫るんですね。自分を愛しているなら何でもできるはずだ、しばらく社会的に死んでくれ、と。しかもまったく悪気なく。「逃げ恥」でいうところの、「好きの搾取」の究極形でしょうか。
 この人は、第7話「検地がやってきた」で政次にも、「おとわのためなら、理不尽を耐えられるはずだ」と無理を迫ります。幼なじみであることを捨てて、部下に徹する政次ですが、この場面では心の一番触れられたくない部分にズカズカと踏み込んで、一点突破しようとする直親に、「おまえのそういうところが、好かぬ」とタメ語で言い捨てるのでした。


■自分の思いよりも、相手の気持ちを尊重する政次


 一方、政次ですが、自分の「さびしい」という感情などよりも、相手の立ち場や気持ちを尊重する人です。彼は、おとわが許嫁である亀を好きなのをよく理解していて、自分の心を殺しています。それこそが、彼のもつ優しさの正体であり、私などが引かれるところですが、そのせいで、彼の気持ちはずっと届かないままなんですね。彼は自分の心を明かすことはありません。けれど行動がすべてを物語っています。他の人と結婚することはせず、嫌われても、つねにおとわを守ることに徹しています。なんという誠実、なんという献身。
 第11話「さらば愛しき人よ」では、直親は今川に殺される直前、政次と和解し、「今川の支配を抜けたら、おとわは、お前と一緒になるのが一番よいと思う」と話します。幼い頃からずっとおとわを思ってきた政次ですが、「彼女がいやがるのではないか。彼女はずっと家のために何もかもを我慢してきた。彼女の自由にさせてやりたい」と応じます。もしそういう状況になったら、彼は本当にそうするでしょう。そんな気がします。
 政次は彼が唯一心を許す相手、戦死した弟の妻なつに対しても、「いつまでも(嫌われ者の)この家にいては、あなたがつらい立場になるのでは」と気づかいを見せます。

 

■子ども時代からぶれないキャラ設定

本作の良いところは、子ども時代からキャラ設定がぶれていないところですね。ドラマの一番最初の場面からして象徴的です。鬼ごっこで逃げるおとわを、子供じみたうそでつかまえようとする鶴(政次)。おとわは、鶴が思いもしないような、滝つぼに飛び込む、という手段で逃れます。そして今までのところ、二人の間ではこのような関係が続いています。知恵をめぐらせ、自分の思う方向に物事を動かそうとする政次と、女の人ならではの枠組みにとらわれない視点で突破する直虎
 ちなみに、私の一番のお気に入りは第15話「おんな城主VSおんな大名」。直親が死んで以来、ダースベーダ―のような黒い衣装で、「今川に直親を売った裏切り者の家老」という役を演じ、心を閉ざし、盾となって直虎を守ってきた政次の本音が見えます。ここでも、強引に後見を降りさせることで、今川から直虎を守ろうとする政次ですが、直虎はそんな浅い知恵には縛られず、見事に政次をあざむいて逃げ切るのです。

 

リスク管理に優れた政次、最期はどうなる?

 本作での政次は、前へ前へ進もうとする城主に対し、つねにリスクを指摘する立場を貫いています。最悪である「直虎の死」「井伊家の滅亡」を避けるためにはどうしたらよいのか、頭をめぐらせています。その様子は、最新の19話では、まるでお嬢様と黒執事のようにほほえましいものになっています。
 史実では、小野政次は、直虎を追い出し、30数日間だけ井伊家を支配した揚げ句、家康に「謀反人」として殺されるのですが、本作でこれだけリスク管理に優れた役として描かれる政次が、単純に自分の欲のためだけに井伊家を乗っ取ることはありえません。きっとすべては直虎、井伊家を守るため。それがどう描かれるのでしょうか。政次の気持ちが、直虎に伝わることはあるのでしょうか。

 
■政次と結婚してれば良かったのに…

 ちなみに、おとわは亀(直親)が行方不明だった子ども時代(第2話「崖っぷちの姫)、親によって政次と結婚させられそうになりますが、「亀(直親)を待っていると約束した。帰ってきたときに、鶴(政次)と結婚していたら、亀がかわいそうではないか」という理由で、自分で強引に髪を切って、出家してしまいました。おとわの気持ちは理解しながらも、やはり政次は傷ついたのでしょう。何回か、チクチクとこのときのことを持ち出しています。「自分は彼女に愛されることはない」と心を閉ざす原因にもなっているようです。一方、おとわは、このときに政次を傷つけていた、などと思いもしません。
 でも来週第20話では、直親は行方不明になっていた間に、他の女性との間に子どもをもうけていたようですから、直親を待つことなどせず、このときに、政次と結婚していたほうが良かったんじゃないんですかねえ、と一視聴者の私。直虎は、粘り強く、開放的な人柄で領民に慕われる型破りな城主、行方不明の許嫁を思い続ける一途な女性として描かれていますが、姫ゆえに、周囲の苦労に無頓着。また、人の心の細かい機微には気づかないようです。
 第18話で、裏切ったかに思えた政次が井伊家を守ろうとしていたことには気づくのですが、まさか政次が自分を愛しているなどとは思いもしません。この鈍感ぶりが、政次大好きの私を、ときどき最高にイライラさせるのでした。