【直虎32話までの感想】あえて言おう、なつへのプロポーズはいらない

 久しぶりの更新になります。25話でうきうきしていた直後にノベライズ3巻を読んでしまい、この政次からなつへのプロポーズシーンに、氷水をいきなりぶっかけられたような衝撃を受けました。控えめに言って、大失恋です。しばらく食事がのどを通らず、なぜこんなことになったのかと考えて考えて…。ブログを書くエネルギーがなくなってしまいましたが、本編みてもやっぱりプロポーズに納得いかないので、あえて書くことにしました。

 

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■アンドレじゃなかったの?

 ノベライズ3巻読むまでは、政次はアンドレだと信じ込んでいたんですね。アンドレというのは、死ぬ直前にオスカルと身も心も結ばれる恋人、伴侶です。だから、直虎も、まあ、尼なんで結ばれることはなくても、いつか政次の思いに気づき、二人は男女としても思い合うようになると、心のどこかで思っていた。
 ところがどっこい、政次は死ぬ前の回に、一緒に暮らしているなつにプロポーズ。「おいコラ、『おとわさまに憧れていた』『殿をやっている殿が好きだ』って、なぜ本人に言わない!」。そしてなぜ、政次が向き合って優しく抱きしめるのが、なつなんだよ~。
 男は自分を愛して、理解してくれる女性を求める。そういう女性の前でだけ、心を開くことができる。それはわかりきった習性です。なぜそのリアルをこの局面にぶっ込んでくるのか。どうせ来週、直虎のために死ぬんじゃないの?死ぬときは直虎だけを思うんじゃないの?だったら、変にリアルを持ち込まず、直虎への愛を一途にストイックに貫いてほしかった

 

■これは私のワガママですが…

 直虎は、他の男を好きになっている。殿としての仕事が一番大事。自分一人のものにすることは決してできない。だけど、そんな直虎を、殿としても、女性としても、ずっとずっと愛し続けてほしかったんですね。これは女のわがままなんですけどね。そこが、「政次の不憫」の正体で、みんなが政次を愛した理由じゃないですか。
 二人の囲碁シーン。一番最初の19話では「いつでも(殿)を降りられてもかまいませぬぞ」だったのが、最後になる今回では「降りることなどかないませぬ」となっている。ずっと直虎を待ち続けていた政次が、直虎の領主としての才能を認め、同時に女性として自分のものにするのをあきらめたことを意味しています。直虎への初恋をあきらめた直後に、寂しさから、あるいは責任感から、自分を愛して支えてくれた女性にプロポーズ、って流れなんだろうけどさ。

 「逃げ恥」や「椿町ロンリープラネット」をあげるまでもなく、「同居もの」は少女マンガのド定番です。かいがいしく世話をするうちに片思いの人に愛してもらえるようになるってのは、それはそれで大好きなテーマなんだけど、ずっと直虎目線で見てきてるんだからさ、今さら急に切り替えられないよ。

 所詮はノベライズ、公式を見るまでは、と思って今日まで何も書かずに来ましたが、やはり本編ドラマをみても、「プロポーズしないでほしかった」という思いは消えないですね。直虎は、自分で気づかないうちに、政次を二度失うことになった。脚本家の人、ヒロインに厳しい、というのは、本当だったんだなあ。

【直虎26話感想】政次の不憫、新ステージに突入…

 「魂の囲碁」を頂点とした幸福は、たった2週間しか持たなかったようです。龍雲丸再登場とともに、ふと気づくと、政次が新たな不憫のステージに突入している…その名は「埋めがたい寂しさ」。主従の信頼はいまや完全なものになったけど、直虎をどうしてもつかまえることができない。つかまえた、と思ってもすり抜けてしまう。「殿はいつも、面倒な方にばかり行かれる」。直虎が気賀に向かって飛び出していってしまった後、にゃんけい和尚と語り合う背中が切ないねえ。

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■気づかない二人

 前回25話は愛があふれすぎて最高に萌えましたが、考えてみれば二人はお互いに同じ時間に離れた場所で囲碁通信していたことは知りません。「冷たかろう」にしても、政次の手が直虎の頰に触れたのは高熱の状態のときで、直虎の記憶には残らない
 政次はいつも直虎を注意深く観察していて、龍雲丸がらみでは特に心の変化を見逃さないようにしていますが、その本音の表情が見えるのは視聴者だけ。言葉も裏腹で、家臣や同志、幼なじみ以上の気持ちは直虎に伝わりません。

「とにかく、あやつらのために井伊を危うきにさらすのは、もうおやめくださいませ」

今回、井戸端で直虎を怒鳴りつけていましたが、政次のいう「井伊」とは、直虎自身のこと。せっかく謀反の疑いをかわしたのに、また危険にさらされることをとっても心配しているのです。それがうまく伝わらないんだなあ。不器用ってことなんだろうけど、見てるこっちは、あー!もどかしい~!。まあ、この辺、いくらなんでも直虎がちょっと鈍感すぎるとは思いますが。

 

■政次と龍雲丸の「情と理」
 

 龍雲丸はただの魅力的な当て馬かと思ってきましたが、再び登場し、おいしいところをかっさらっていくし、なんだかかっこよく見えてくるし、政次と龍雲丸には物語の中で、直虎の成長のため、それぞれ与えられた役割があるように思えてきました。
 
 今まで見てきただけでも

 ・政次:「殿が今、守らねばならぬものはなんだ?」

  孫子、上に立つ者の倫理、戦国を生き抜く戦略

  → 戦わずして勝つ
 
 ・龍雲丸:「領主なんて泥棒じゃねえか」

  身分を問わず助け合う関係、近づくことで解けるわだかまり

  → 奪い合わずとも生きられる世を作り出す

 

 それぞれが別の形で、城主としての直虎の方向性に決定的な影響を与えています。

 

 また、城主としての導く方向性も政次は理論、龍雲丸は情、すなわち政次は精神の支え、龍雲丸は情欲(煩悩)の対象、となっているようにも見えるのです。

 

 今回、気賀に向けて出かけていこうとする直虎の打ち掛けの裾を、政次が「ドン」と踏みつける場面がありました。紺色のうちかけ(殿としての理性=政次)を脱ぎ捨てたことで、直虎の赤い着物(情熱=龍雲丸)がむき出しになるのが、何とも象徴的です。

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■政次の決定的な不憫

 どうしてこのように役割を分けるのか、現時点ではよく分かりませんが、この設定だと、控えめに言っても、政次の片思いは決定的です。そして、女性として直虎を愛する限り、彼には埋めがたい寂しさが残ってしまう。追いかけて、追いかけても、近づくほど見えない~♪ チャゲアスかよ!って感じです。

 誰からも信じてもらえなかったという、これまでの本当の意味での不憫はもうないと思うのですが、但馬はより深い寂しさ、切なさの沼に入ってしまったのか。でもさ、もうすぐ死ななきゃいけない運命なのに、なんでこうなるんだっけ?結局、電波で囲碁できるほど魂が結びついているのに、ほかの男の人に煩悩するっていう直虎のキャラ設定が、今更ながら私自身、よく理解できていないのかもしれません。

【直虎25話感想】心で結びついた愛はどこにいく。直虎と政次「魂の囲碁」

 やばいです。今回「たまらん要素」が満載すぎて、微動だにせずテレビの前に座り込んでしまいました。愛が画面からあふれ出ている…。あまりの満足感に、もう、政次がいつ死んじゃうとか、片思いのまま終わるのかとか、昨日までの最大の関心事がどっかにいってしまいました。もうそれはいい。仕方ない。それよりも、退場までのわずかな間に、もっともっと直虎を愛して愛して、彼女の心と私たちの目に、その愛の深さを焼き付けてくれ~、と絶叫。

 どうしてこんなに心に刺さってくるんだろ。こう毎回究極の愛を見せつけられては、こっちの身が持たないんですけど。脚本家の人、大河ドラマという国民的な枠をつかって、自分の理想の男(政次)を描こうとしているんじゃないか、と常々疑惑をもっていましたが(そしてその理想の男が自分の理想とぴったりすぎてドハマり)、今回、またも確信しました。このドラマは、歴史を利用して、この人が思う「愛とは何か」を追求している。 

 「直虎」で描かれている「理想の愛」の構成要件

1、どんな状況でも揺るがず、守り続ける

2、見返りを求めない

3、相手の悲しみは自分の悲しみ(20話 第三の女)

4、相手の心を尊重する(23話 盗賊は二度 仏を盗む)

5、深い信頼(23話 盗賊は二度 仏を盗む)

6、心がつながってる ←NEW!

7、ほかの女性は優しく拒絶 ←NEW!

8、触れたい、抱きしめたいと思う気持ち ←NEW!

 

(八つのうち三つが今回の初出だから、画面から愛があふれちゃうのも納得)

 

 愛ではないもの

1、煩悩

2、不誠実、スケコマシ(20話 第三の女)

 

囲碁で描かれる心の結びつき 

 ごく一般の男女関係ならば、愛とは、結婚、子ども、家族、別れ…というふうにつながっていく。何度も書き古されたことです。しかし、直虎も政次も独身で子どもはいません。ここまで心がつながってしまったら、私(視聴者)の政次ロスもやばいけど、直虎の方が深刻なんじゃないか、と思っていたのですが、今回三つの囲碁シーンで気づきました。愛が心の深いつながりだとしたら、死んでしまったあとも、それを残していく

ことはできるんだと。 

 キーワードは、囲碁です。

 

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 まず今回、囲碁は感情が出る、碁盤の上での石のやりとりによって、相手の気持ちもこちらの気持ちも伝わるという、囲碁を通した心のやりとりが最初に描かれています。

 この場面、気賀に材木を売りに行った直虎ちゃんが、気賀の様子を報告すると、政次は、「あの者たちとは、お会いになったのですか?」と龍雲丸に会ったかどうか探りを入れてきます。「よろず請負というものを始めたらしゅうてな。あの者たちなりに前に進んでおるようじゃ」。直後に直虎はまずい手を打って動揺が政次に伝わります。政次は容赦なく黒石を置いて、直虎の白い石を減らし、直虎は心のうちが知れてバツが悪そう。その様子を見て、政次は今川の情報として「気賀に城を築くという話が出ています。井伊ではなく気賀の話、余計な首を突っ込まないように」と釘をさします。

 

 

■過去最高に萌えた「魂の囲碁

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 圧巻は、離れた場所にいる二人が、お互いの手を想像しながら、「そなたなら、どうする?」「どう動く?」と心のうちで語りあう「魂の囲碁。(これを描くために、井伊家に謀反の疑いがかかるようにして、今川の家臣・関口を政次の家に泊まらせた、という設定にしたとしか思えない)やばい、これは、過去最高に萌える。精神で深く結びつくと、最後はこうなるんだという究極の愛の形。直虎は、男として龍雲丸の自由さ、色気にひかれながらも、自分でも気づかないうちに、しっかりと心は政次に結びついている。政次の片思いと思ってきましたが、彼の愛は「信頼」という形で、直虎の心の深い部分に届いている。最後は二人の棋譜がぴたりと重なり、見てる私は萌え死。

 一方、今回は政次の側が、抱きついてきたなっちゃんに対し「殿は落ち着いておられた。きっと切り抜けられる」と話し、領主としてもその判断を信頼していることが分かります。一生分の勇気を振り絞ったとみられるなっちゃんですが、今回は特にタイミングが悪かった。政次は、殿の電波を心で受信中だったから。いつにもまして、直虎のことしか見えていません。この機会に触れて自分の体温を伝えてしまおうという人妻のささやかな下心でしたが、逆に二人の絆を見せつけられて撃沈。政次の背中の後ろで手をふるわせるなっちゃんが、なんだか人ごとと思えない。切ない…。

 

■政次の死後、直虎と盤上で向かい合うのは…

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 で、今回実はあとあとに効いてくると感じたのは、政次と直虎の囲碁ではなくて、政次と虎松(のちの井伊直政)の場面なんですね。「直政の政は政次の政」、とネット上にあったのを、実はけっこう本当なんじゃないかと思っているのですが、いずれにしても、政次が死んでしまったあと、直虎と盤上で向かい合うのは政次から囲碁の手ほどきを受けた、直政ではないかと。自分を最も愛してくれた男を失っても、直虎は本当の孤独にはならない。直親の血を受け継ぎ、政次から囲碁を学んだ直政が、盤上で向かい合ってくれるから。そして、これは単なる直虎の慰めに終わるわけではなく、何回も一人で囲碁をする様子が出てきた松平元康(つまり徳川家康です)のもとでの、直政の出世につながるのでは。

 

 愛された記憶というのは、愛した記憶よりも人を支えると思うんですね。だから、政次が死んでしまったあとでも、彼の愛情が直虎を支えていくのは間違いない。だけどさらに囲碁という形で、半身を失った直虎の支えになって、ひいては井伊家の支えにもなっていけばいいなあ、と。

 今はそんなことを考えています。

【直虎24話感想】と政次の不憫(=ほぼ半生)まとめ。もしかして今が一番、幸せですか…?

 昨夜は「見つめ合って微笑みあう二人」という、至福の展開で終了し、幸せな気持ちで布団に入ることができました。ありがとうございます。予告編でなっちゃんに抱きつかれている政次を見て、胸がざわざわしましたが…

 2クールが終了し、直虎がすっかり城主らしくなってきました。たけさんとの別れの場面では、「もうおとわはいないんだ」と、見ている私もほろり。信長も登場し、なんだか大河ドラマみたいになってきました。

 先日、1話目からドラマを見返して、政次のこれまでの不憫は、膠着した片思いとともに、身近な人たちに信頼してもらえないこと、尽くしても、無視されたり気づかれなかったり、大切に扱われないことに多くを発していることに気づきました。それでも、献身をつづける姿にけなげさを感じていたんだな、と。そう考えると、23話で直虎が龍雲丸を家来にするかどうか相談し、政次の判断を優先した(つまり、自分の恋愛よりも、政次との関係を大切にした)ときに、彼の不憫の一部は報われて、二人の信頼は完全なものになったのだと思います。

 主従として直虎と強固な信頼関係を築いた今、本当の意味での不憫な場面をもう見ることはないのかもしれません。ここで、一度まとめておきたいと思います。読めばもっと好きになる、小野但馬守政次のこれまでの不憫について。

 

■初恋の女の子に目の前でフラれる(しかも4回も)

 物語は直虎(おとわ)と直親(亀之丞)が9歳、政次(鶴丸)が10歳の時から始まります。親同士が決めて、直虎と直親は夫婦約束をし、直親が井伊家の家督を継ぐことになります。お寺の手習いの場面がフラれポイントその1です。二人の夫婦約束が家中のうわさになった翌日、いつもは男の子のようなおとわが、この日はちゃんと小袖を着ています。「亀はわれの旦那様になるのじゃから」。亀の前でしおらしいおとわの姿を見て、鶴丸は「そうなるよな」とさみしそうにほほえみます(第1話 井伊谷の少女)。
 

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さらに可哀そうなのがフラれポイントその2です。直親の父親に今川から謀反の疑いがかかり、直親は井伊を追われます。今川に告げ口をしたのは、鶴丸父親の小野和泉守政直。政直は鶴丸に井伊家の家督をつがせようと、鶴丸とおとわを結婚させようとします。大人の思惑はともかく、好きな女の子が自分と結婚するのだと思うと、甘ずっぱい気持ちになる鶴丸。ところが、当のおとわは「夫婦約束のことなのじゃが、反故にする手はないか。亀は必ず帰ると約束したのじゃ。待っていなければならぬ」と真顔で相談してきます。ひ、ひどい。優しい鶴丸は「俺がいなくなったところで、弟がいるからなあ」とアドバイス

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そのヒントから、おとわは手に刀を持ち、自分の髪の毛をギザギザに切って血まみれになりながら出家。「出家をすれば、誰の嫁にならずとも済むではないですか!」って満面の笑顔です。えぐい。ここまでやならくても…。自分のアイデアに有頂天で、やられた方の気持ちはまったく考えていません。もちろん縁談は破談になります。政次の悲しい初恋こじらせ人生の始まりです。(第2話 崖っぷちの姫)
 フラれポイントその3は、3人が大人になってからです。直虎と直親が19歳、政次が20歳。10年たって、美しい尼になったおとわを、政次は見守り続けていたようです。そこに逃亡していた直親が井伊に戻ってきます。
 今川からの検地の際に、隠し里を今川にばれないように工作しようとする直親。おとわは、直親と結ばれないものの、「直親のために竜宮小僧になる!」と奔走します。亡き父親のあとをついて、今川の目付けの立場にいる政次の家をたずね、いきなり頭を下げ「鶴、このとおりじゃ。亀は鶴のことを信じておる。どうかその気持ちを裏切らないでほしいのじゃ」と頼みます。言われなくても助けるつもりだった政次はむっとして、「亀に言われて来たのか」「違う!われはその、亀の役にたちたくて、勝手にきたのじゃ」。この期におよんでも、亀のことしか考えないおとわに、「では還俗して俺と一緒になるか?次郎さまは俺の立場ではものを考えぬお人であるらしい」などとたたみかけます。一緒になりたい、というのはけんかの中に交えた本音。でもおとわは困惑しきった表情。「なんの覚悟もないのなら、寺で経でも読んでおれ」。おとわを傷つけ、自分も傷つく政次が切ない。(第7話 検地がやってきた)
 

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フラれポイントその4は、記憶に新しい第22話(虎と龍)。直親が死に、裏切りの誤解がとけてこれまでになく心を通わせる直虎と政次ですが、まさかの第三の男・龍雲丸の登場です。屋敷で開いた鍋パーティの場面。龍雲丸を気に入り、乙女のようにはしゃぐ直虎は、政次の真横で、「これからもよろしく頼む!」とくしゃくしゃの笑顔を見せます。政次は完全に蚊帳の外。ここにきて、この項目の政次の不憫レベルは、最高地点に達していると思われます。

 

 

■でもその子だけが好き

 

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ここまで思いが届かないと、普通は他の女性を好きになりそうですが、政次に他の女性の影はありません。モテないというわけではなく、同居の亡き弟の嫁、なっちゃんは明らかに政次に惚れてる様子。いつも優しくしてくれますが、政次は一定の距離をおいています。完全に膠着した片思いなのに、他の女性を好きになれない。これはこれで、本人もかなり持てあましているのではないでしょうか。

 

 

■有能なのに評価されない(たまに恨まれる)

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 幼い頃から聡明な政次ですが、小野家に生まれたために家中で嫌われて、何を言っても「今川の犬」とさげすまれ、能力が正当に評価されません。しかも弁が立つので、正論で返し、恨みを買うこともしばしば。一番かわいそうだったのは、第10話(走れ竜宮小僧)。桶狭間の戦いで戦死した政次の弟・玄蕃のおよめさんのなっちゃんは、玄蕃が亡くなったあとも、息子の亥之助を連れて小野家にいます。本人の希望ですが、なっちゃん父親脳筋系・奥山朝利は、政次になっちゃん母子を返すように迫ります。「亥之助がこちらに来てしまえば、人質をとられた格好になるからか」とげすの勘ぐり。そこで、政次のザ正論。「かような大事なときに奥山殿は寝床の中で己の家のことばかり考えておられると、お方様もみなさまも、失望されましょうな」。で、頭空っぽの朝利に斬りかかられた政次は、逆に朝利を斬ってしまいます。けがをして、ふるえる政次が向かったのは、おとわのいるお寺。この場面、「ふるえる子犬」とツイッターで話題になりました。

 

 

■帰ってきた幼なじみが脳筋サイコパス

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 逃亡生活から10年ぶりに戻ってきた幼なじみ・直親の人格がゆがんでしまっています。今見返してみると、逃亡生活ゆえに、人を心から信頼するということができなくなっていたのかも、とは思いますが、ともかくひどい。一番ひどかったのは、第7話(検地がやってきた)。検地のさいに、隠し里が今川の役人にばれそうになった時の場面です。「これは井伊の里ではないのか?まさか、われらをたばかろうとしたのではあるまいな?」今川の役人に迫られて、政次は腹をくくり、隠し里の台帳を出そうとした瞬間、直親が政次を問い詰めます。「私は帰ってきたばっかりでわかりません。但馬、ここは井伊の里ではないのであろう。何も言ってなかったではないか」と、部下にいきなり罪を押しつける。オイオイ、クズ上司じゃないか…。政次は、とっさに「ここはかって南朝の皇子が隠れておすまいになられていた里にございます。故に井伊領ではありません」と答えますが、怒りがおさまりません。お寺の井戸端に直親を呼び出し、「それがしを信じておられぬならおられぬでかまいません。されど信じているふりをされるのは気分がよいものではありませぬ」と言って立ち去ろうとします。そこに直親から、自分の行動を正当化するようなひと言。「井伊を守るのは、おとわのためだと思うてはもらえぬか」。政次は、冷たい表情で、「お前のそういうところが好かぬ」と去っていきます。

 

父親に呪いをかけられ、家中で裏切り者扱い

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 政次の父親の政直は、筆頭家老ですが、今川びいきです。直親の父親を今川に売ったり、政次をおとわと結婚させて家督を奪おうとしたりと、野心家で、家中で毛虫のように嫌われています。死ぬ間際、政次に対し、「お前はわしを卑しいと思うておるじゃろ。なりふりかまわぬうそつきの裏切り者。己はこうはならんと、ずっとわしをさげすんでおる。じゃがな、言うておく。お前はわしを必ず同じ道をたどるぞ」と呪いをかけます。その当時の政次はそんなはずはないと一蹴しますが、今川の権力の元、直親を裏切らざるを得ない立場に追い込まれ、思い出すのは父親のひと言。そして、井伊の男たちがみんな死にたえたころに、ダースベーダ―のような黒づくめの姿になって、直虎の前に現れるのです。

 

 

■人の気持ちを思いやる性格が裏目に出て、貧乏くじ

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 政次は物語の最初から、人の気持ちを思いやる優しい少年として描かれています。熱が出て倒れた亀を背負って家に届けますが、政次の父親を嫌う家人には「おい、おまえが亀之丞さまに無理をさせたのか?」と憎々しげに言われます。こんなところがとてもかわいそうなのですが、ずっと性格は優しいままです。つい前回も、直虎の龍雲丸に思いを寄せているのを知りながら、近藤にとらえられそうになった龍雲丸を逃がします。

 

■とにかくツイてない

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 大人編スタートの第5話(亀之丞帰る)の最初の場面は、政次の父・政直が政次に井伊家の家督をつがせようと、奥山朝利の娘との結婚話をすすめ、それを政次がおとわに相談にいくところから始まります。しかし、この話は、亀が10年ぶりに井伊に帰ってくることになり、立ち消えに。本人は別に井伊の家督がほしいとは思っていなさそうですが、こんな感じで、常にツイてない…。

 

 

【結論】
 ・報われない片思いなのに、ストーカーとか逆恨みとか、そっち方向にいかず、相手の心の負担にならないように、陰で守り続けるという姿勢に徹しているところが希有
 ・家のために尽くしても、信頼されないことがほとんどの人生で、今初めて当主の直虎と信頼関係を築いている。サイコパス直親も死に、龍雲丸も家来になることを断り、片思いは相変わらずだけど、もしかして、今が一番、幸せですか…?

【直虎23話感想】「不憫(=理想の深い愛)」の究極形を見よ

 日曜の夜、私は一つの理想の愛が完成するのをテレビの前で見ました。そう、これだよ!これ!これこそ、少女マンガとか小説とかドラマとかで私が追い求めてきた理想の男性キャラクターの究極形の一つじゃないかあああ。公共の電波で、こんな一部の人のためのドラマを堂々とやっていいのかよくわかりません。ただ私は改めてこのドラマに猛烈に感謝しています。
 政次が、近藤に引き渡すふりをして龍雲丸を陰で逃がしたとき、不憫、そう呼ぶモノの正体がやっと分かりました。これはね、理想の愛の形なんですよ。政次はとっても頭がいいから、盗賊を逃がしたら、井伊に戻ってくるってわかってる。そしたら、「家臣に」ってなるのも想定してる。それでも、直虎ちゃんのために、逃がすんです。
 自分の愛する女性が他の男を愛したらどうするか。男同士でけんかする?身をひいて去る?彼女を縛る?答えはノンノン。少女マンガにおける理想の愛では、とにかく男性はね、嫉妬してもいいけど彼女を縛るのはNG。彼女の選択を尊重して、幸せを願うんです。そして、去ってはいけない。去った途端に脇役確定です。彼女が誰を愛そうが、あくまでもそばにいて、彼女を守り、愛し続ける。嫉妬で苦しくても、つらくても、彼女の笑顔を守ろうとするんです。そして、その愛が深いほど、彼は悲しみを背負う。その悲しそうな表情を見ると、不憫、不憫と言いつつ、私の心は彼の愛の深さを知って満たされるんです。
 それが頭が切れて、品が良くて、きれいな男なら言うことない。じゃなくて、そういう男じゃなくちゃ、「いい人」で終わっちゃって、話が成立しないんだよ!

 愛とは、相手の人格を尊重すること。相手の選択を大切にすること。それを突き詰めていくと、最終的には相手の恋愛も尊重しないといけなくなっちゃうんですよね。だから、愛の究極形は…自分から離れていく彼女を受け入れることです。切なかったですねえ。直虎ちゃんに真剣に相談されて。好きになってはもらえないけど、信頼されて。こうなっちゃうともう、スゥイートサレンダー、観念するしかない。お手上げですよね。「あの者たちのために、井伊を使うことがないように(つまり、振り回されないように)」って言うのが精一杯。何に負けるって、自分の中の愛に負けるんです。


 龍雲丸はこのために登場させられたんだなあ、きっと、たぶん、おそらく。このドラマにおける政次の愛を際立たせるための、魅力的な当て馬として。

 
 ちなみに、少女マンガでは、理想の愛を追求する、こんな人たちがいます。

 ・アンドレ=ベルバラ
 ・倣立人(ファン・リーレン)=花咲ける青少年
 ・万里小路有功=大奥
 (ちょっと違うけど、藤沢周平の「蟬しぐれ」とかも…)

 いま気づいたけど、ヒロインはみんな「姫」的な人たちですね…

 

 ちなみに、身を引いて去っていった人は

 ・早坂さん=東京タラレバ娘

 ・ジェローデル=ベルバラ

  
◆次は「誠実」を試される

 そしてそして、この理想を完成させるためには、もう一つの大事な要素があります。それは男性キャラを愛する他の女性です!そう、つまり、なっちゃんだ。
 政次はなあ、なっちゃんに優しくしてもいいけど、けしてなびいてはいかん。ここでなびいたら、ただのリアルな男の人になって、今までの努力が台無しなんだよ。今は分別をわきまえているなっちゃんから誘惑されて、それを優しく振り払えたとき…そのときがおそらくこの理想の愛が完成するときだあ。
 って、この妄想、だれか受け止めてくれませんかねえ。
 「直虎」って、脚本家の人の理想の男(=政次)を追求しているようにしか見えない時があるんです。そこが大好きなんですけどね。

【直虎22話感想】恋する殿、横で見せつけられてる政次の不憫さに号泣

 今週、まずNHKにお礼を言いたいです。ありがとうNHK、こんなにハマれるドラマを作ってくれて。高橋一生さんに不憫な片思い役を振ってくれて、マジありがとうございます。これがあるから、仕事がつらかろうが、息子たちがアホだろうが、1週間生きてゆけます。心の隙間を埋めてくれてます。
 視聴率低くくても、男性や高齢の視聴者が理解できなくても、いいじゃないか、NHK。私は大好きです。
 このうえは、どうか政次を長生きさせてあげてください。彼がちょっとは報われますように。どうかどうか~

 

■直虎がチョロすぎる

 てなわけで、今週も七転八倒しながら見れました。まず直虎がチョロい!おいおい、それでも30歳すぎ?城主なの?ノコギリ引きの場面とか、その後妄想してる場面とか、乙女すぎてこっちが恥ずかしくなります。なんだこれ、B級ラブコメじゃーん、と言いつつ目が離せない。一人で見てて良かった~。でもなんか最近、ちょっと色っぽくなってきましたね。

 

■龍雲丸はアラン?

 で、今週は龍雲丸がかっこいいんですね。最初登場したとき、いきなりふんどし姿だし、なんでこんなヤツに??と思っていたんですが、目元に色気があるというか。率直に言って、エロい。なんか香水とかのいい匂いがしそう。直虎が惹かれる気持ちもわかるかも。武家出身ということですが、彼はもしや、ベルばらにおける衛兵隊の班長アラン?(確か、貴族出身だったような)。オスカルに強引にキスしてアンドレに殴られるやつ。あー、そう考えると、高瀬って、ベルばらに出てくる妹みたいにかわいいロザリーって気がしてきました。「たけさん」って、オスカルのばあやじゃん。って話がそれました…。

 

■くだらんぞ、但馬

 村人たちが集まっての楽しい飲み会の場面、遅れてカッコよく登場した龍雲丸。盛り上がるBGM。気持ちが通じ合い、満面の笑顔の直虎ちゃん。でも一視聴者の私の気持ちはヒヤヒヤです。だって、真となりで政次が一部始終を見てるじゃないですかぁ。あー、まずい、直虎ちゃん、その笑顔はまずい、そのはしゃぎぶりはまずいよ~って思っていたら、やっぱり彼は飲み会から消えましたね。自分の感情がダダ漏れになりそうになると、とりあえずその場から立ち去る傾向があるようです。
 今回、最初からずーっとイライラしてた政次。直親が生きてた「真昼の月」時代には、イライラや嫉妬心?を(視聴者の前に)出すことなんてほとんどなかったのに。

 でも単純な嫉妬とは違ってそこにはいろんな気持ちが入り交じってる。一歩間違えば殺されるかもしれない立場で、あるいは殿としてみんなを守る立場で、何を色恋に浮かれてんだよ、と家老としてイライラする気持ち。おまえ絶対ソイツ(イケメン、チャラそうな龍雲丸)にちょっかい出されてるだけ、おまえごときが太刀打ちできる相手じゃない、傷つくだけだからやめとけ~!!と幼なじみとして心配する気持ち。さらにその下の下にある本人も認めたくない気持ち。

 

■複雑だけど、だんだんわかりやすくなってきた? 

 以前、高橋一生さんのインタビューを掲載しましたが、高橋さんの言うとおり政次はとても複雑な人間です。
 井伊谷の人たちや他の家来の前では、今川寄りの目付け役の家老。そして直親が死んで以降は、鶴、亀、おとわの3人の幼なじみの1人として、どんな手段を使っても、亀に続いておとわも死なせてはいけないと、責任感から自分に誓いをたてていたように見えました。
 でも、18話で直虎の誤解がとけて以降、直親の隠し子に傷ついた直虎を見て自分も傷ついたり、誘拐された直虎を心配して寝ずに待ったり、なんというか、幼なじみを超えたところの気持ちが、だんだんこっち(視聴者)にも漏れてくるようになりました。理性的な彼にとってはたぶん、こんな気持ちなんかくだらなくて、余計なもので、いっそなくなればいいと思っているのでしょうが。

 

大河ドラマだからこそ

 考えてみれば、これだけ複雑な人物像を描けるのも、1年間にわたる大河ドラマだからこそですね。3人の子どものころ、そして成長する姿がしっかり描かれているから、私ごときにもいろいろと想像する素地があるのだと思います。大河ドラマって篤姫以来まともに見たことないんですけど、こういう使い方があったんですね~。


 

【直虎21話感想】殿が暴走、政次が浮かばれなさすぎて悲しくなってきた

 前回20話ほどの面白さと爽快感はなかったものの、胸がザワザワする感じで終わりました。これは…先週初恋に別れを告げて、あっという間に新たな恋の予感。尼さんなのに、大河ドラマの主役なのに、こんなに肉食で、積極的でいいんだろうか…。

 

■直虎、気賀で暴走

 気賀という新しい舞台で映画「007」ばりのアクションで暴走し、盗賊団に誘拐された直虎ですが、ほぼ無傷で帰ってきました。政次の知恵で盗賊団をあざむいて、ほとんど何もとられないで済んだところまではよかったんですが…。直虎は誘拐されている最中に、盗賊団の頭領・龍雲丸(柳楽優弥さん)に、「領主こそ泥棒じゃないか」と言われたことが気になって、彼に手紙を書き、山あいの寺に呼び出します。
 にゃん渓和尚に間に入ってもらって、頭領を待つ直虎。この場面、好きな人に手紙を送って、来てくれるかな、って待つ女子みたいでした。見てる私もちょっとドキドキ。そして、そして、頭領は現れました。彼も何か期待するものがありそうです。しかし、直虎が話し出したことは…「人の卑しさをむき出しにせずとも済むような世をつくろうではないか」って…色気なし、意味不明です。
 自分を誘拐した盗賊を呼び出して、井伊での仕事を持ちかける。普通の感覚ではちょっと理解できないし、すぐれた領主のやることとも思えません。なんだかんだ理屈をつけていますが、これまで周囲にいなかったようなワイルド系があらわれて、惹かれてるんですね直虎は。どうしてももう一度会いたかったんです。彼とつながりを持ちたかったんです。「名はなんというのじゃ?」と龍雲丸に尋ねたときの、直虎の表情。上気した頰、ピンクの唇、とてもきれいでした。気づいてないのは本人だけで、柳楽くんにも、にゃん渓和尚にも、そして見てる私にも、バレバレですね。


■政次の献身ぶりに胸が苦しくなってきた

 やっと初恋から卒業して、誤解もとけて、政次との精神的つながりが深まり、日曜8時が至福の時間になる、かと思いきや、まさか他の男に目がいくとわ…。初恋の男(直親)を思い続けている間は、まあ仕方ないかな、と思っていたのですが、こうなると政次の献身ぶりに胸が苦しくなってきました。
 直虎が他の男の人を好きになったら、彼はどうするんでしょうか。それでも、彼女を助け、守り続けるのかな。「すべて次郎(直虎)さまのお好きに」。彼は優しすぎます。
 今回、直虎が誘拐されているあいだ、立場上自分で助けにいけない彼は、にゃん渓和尚に助けを頼み、お寺でほとんど寝ないで心配していたようですが、そんな心配も直虎には伝わりません。本人に伝えるつもりがないからです。やっと直虎が帰ってきても、遠くから見ていることしかできず。「心配させやがって」とアピールすることもなく、媚びず、縛らず、彼女を自分一人のものにしようともせず、ただ守り続ける。幸せを願う。そんな愛情ってあるのかな。そして、そんな愛情がむくわれないまま、物語が終わっていいのかな。ベルバラのアンドレだって、最後はオスカルと結ばれるんですけど。(そういえば、オスカルもまあまあ、寄り道してたか…)
 大河ドラマ「直虎」は女性の妄想を結実させたような物語ですね。尼さん、という設定はともすれば初恋以降は恋愛ゼロのカサカサになる危険性もあるわけですが、その設定を逆手にとって、最大限にいかしているようにさえ見えます。誰にも体を与えず、誰のものにもならず、誰にもしばられないまま、夢に向かって一直線、それでも政次のような男たちに大切にされ、守られ続ける。満たされない部分は、ちょっと毛色の違う龍雲丸のような男と火遊び…ってこれじゃあ、男性視聴者がついてくるはずないよ!
 ああ、いったいこの後どうなってしまうでしょうか。私は、政次と碁を打つほのぼのの直虎がみたいんですが…。